
RESEARCH
NOTE
理事長Lab
思考の土台を
築くということ。
Building the Foundation for Thought
教育は、目に見える成果だけで語ることはできません。
幼児期の実践は、数値として即座に表れるものではない。
しかし、確実に子どもたちの内側に蓄積されていきます。
その違いが姿を現すのは、就学後3〜4年頃です。
問いを持ち続けられるか。
困難に直面したときに立ち止まらないか。
自ら修正し、考え直せるか。
その差は偶然ではありません。
幼少期に築かれた“土台”の差です。


認知スキルという基礎構造
The Architecture of Cognitive Skills
私たちが重視しているのは、知識の量ではありません。
「認知スキル」とは
注意を向ける力。
比較する力。
分類する力。
因果関係を捉える力。
見通しを立てる力。
それらは、思考の骨格です。
読書や対話、学習支援を通じて形成される言語能力や問題解決能力は、
その後の学習に直結します。
早期に形成された認知スキルは、
学校教育での達成の基盤となり、
やがて生涯にわたる選択の幅を広げます。
しかし、それは急がせることで育つものではありません。
「考える力を育てる」という理念
「考える力を育てる」。
それは、正解を早く出す力ではない。
問いを持つ力。
仮説を立てる力。
試す力。
修正する力。
対話する力。
認知スキルが土台であり、
考える力はその展開です。
基盤なき思考は、持続しない。
だからこそ、私は基礎を重視します。

The Philosophy of "Cultivating the Capacity to Think"

国際的視点
An International Perspective
20代で経験したヨーロッパでの仕事。
弁論会で若者が迷わず意見を述べる姿に、
私は思考の構えの違いを見ました。
知識の差ではない。
土台の差でした。
問いを持つことが前提である文化。
その経験は、幼児教育の本質を問い直す契機となりました。
国際バカロレア(IB)が重視するのも、知識量ではなく思考の質です。
問い続ける姿勢。
多面的な視点。
根拠を持つ対話。
私は制度よりも、その思想に学びました。
合理改革から環境設計へ
From Rational Design to Environmental Design
就任当初、合理的設計を導入しました。
目標の明確化。
成果の可視化。
しかし、観察を重ねる中で葛藤が生まれました。
設計が強まるほど、思考が短絡化する瞬間があった。
そこで私たちは、問いを変えました。
何を教えるかではなく、
どのような環境で考えるか。
時間の余白を守る。
指示を最小限にする。
評価を急がない。
この転換は、13年間の検証の中で確信へと変わりました。


レジリエンスという芽ばえ
The Emergence of Resilience
失敗する。
崩れる。
それでも立ち上がる。
くじけずに挑戦する勇気と、
人の気持ちを理解する心。
それが、乳幼児期に芽ばえる人間力です。
急がない環境は、挑戦を支えます。
急がないという決断
社会は速い。
しかし、思考の土台は速くならない。
私たちは、急がない。
それは理想ではなく、経営判断です。
短期成果より、長期基盤。
13年間の検証が、その判断を支えています。

The Decision Not to Rush
主体性。認知スキル。考える力。レジリエンス。
それらは別々ではありません。
すべては、環境の質に結びついている。
教育は設計できる。
しかし、強制はできない。
だからこそ、私たちは環境を整える。
思考の土台を築くために。
Autonomy.
Cognitive skills.
The ability to think.
Resilience.
They are not separate from one another.
All of them are connected to the quality of the environment.
Education can be designed.
But it cannot be forced.
That is why we prepare the environment—
so that the foundations of thinking can grow.